任務は、宇宙人も地球人も集まるまちづくり。こんな極秘指令書が昨年、「UFO研究所」職員の近野哲さん(62)に交付された。過疎化する「UFOの里」、福島市飯野地区で、独自の「地域資源」を生かした活性化が加速している。
JR福島駅から車で約20分。同市飯野町北部の「千貫森」(標高462メートル)周辺では、昔からUFO(未確認飛行物体)の目撃情報がある。千貫森は「飯野のピラミッド」と呼ばれ、山中に磁針が定まらない場所があることから、地下の強力な磁場がUFOを集めるとされてきた。これが「UFOの里」の由来だ。
地域の人によると、飯野町はかつて養蚕業や絹織物業が盛んだったが、安価な海外産の絹に押されて衰退の道をたどった。人口も1955年の昭和の大合併時の9485人をピークに減っていった。
だが、飯野町にはUFOという地域資源があった。
町は92年、竹下登内閣が「ふるさと創生」の名目で全国の市町村に配った1億円を使い、千貫森中腹に「UFOふれあい館」を開館させた。UFOや宇宙人に関連する書籍など計3千点を収集し、宇宙人の石像を配した千貫森の登山道を整備するなど、マニアの間で人気を集めた。
一方、同館は町中心部から約3キロ離れた山中にあるためか、UFOに熱心ではない町民にとって「山の方で何かやっているな」程度の受け止めだったという。
飯野町の人口減は止まらず、08年に福島市に編入合併。22年11月末現在の町の人口は5052人とピーク時から半減した。町中心部で井戸端会議をしていた女性(75)は「本屋がやめ、自転車屋がやめ、どんどん寂しくなるね」と嘆く。
ふれあい館の30周年を前に近年、「いよいよ地元も行政も本気になった」。地域の人たちでつくる「UFOの里いいの聖地化プロジェクト」を率いる阿曽隆一さん(53)はそう話す。
21年6月には、ふれあい館を拠点とする国際未確認飛行物体研究所(通称・UFO研究所)を開所。初代所長には、超常現象を扱う「月刊ムー」編集長の三上丈晴氏を迎えた。世界中からUFO目撃情報を募集し、これまでに500件以上が寄せられている。
30周年を迎えた22年は官…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル